大判例

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大分地方裁判所 昭和26年(ワ)277号 判決

原告 岩崎秀直

被告 新興硝子工業株式会社

一、主  文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は第一次の請求として「被告会社が、昭和二十六年六月二十九日附の臨時株主総会議事録に記載した解散並に清算人選任決議は存在しないことを確認する。被告は原告に対し、同年六月三十日大分地方法務局受付を以て為した右解散並に清算人清水逸夫の選任登記の各抹消登記手続をせよ。訴訟費用は被告の負担とする」。という判決を求め、その請求原因として被告会社は昭和二十六年六月二十九日付を以て臨時株主総会議事録を作成し、此の議事録によれば同日の株主総会において被告会社を解散し、清算人として訴外清水逸夫を選任するという決議が成立した旨の記載があり、次いで被告会社は同年同月三十日大分地方法務局に右解散並に清算人選任の登記を申請してその旨の登記を完了した。しかしながら、被告会社は同日株主総会を招集した事実はなく又右の決議をしたこともない。

されば、右決議は本来存在しないものであるから、被告会社の株主である原告は此の決議の不存在確認並に被告に対し右登記の抹消登記手続を求める為本訴に及んだ次第である。と陳述し、若し右の請求が認容されない場合には第二次の請求として「前記決議を取消す。被告は原告に対し大分地方法務局受付を以て被告のした前記解散並に清算人選任登記の各抹消登記手続をせよ。」という判決を求めその請求原因として、仮に昭和二十六年六月二十九日被告の臨時株主総会において右の決議が真実為されたとしても、被告会社の取締役は原告を始め、各株主に対し旧商法第二百三十二条に従う招集の通知をしていないから右決議は総会の招集手続に違法があり取消を免れざるものである。よつて原告は被告会社の株主として瑕疵ある前記決議の取消並に被告に対し右登記の抹消登記手続を求める。と陳述した。<立証省略>

被告訴訟代理人は主文と同じ判決を求め、原告の第一次及び第二次の各請求に対する答弁として被告会社の昭和二十六年六月二十九日付の臨時株主総会議事録に原告の主張する内容の決議がなされた旨の記載があること、被告がその翌日大分地方法務局受付を以て原告の主張する解散並に清算人選任登記を経由したこと、原告が被告会社の株主であることは認めるけれども原告その余の主張事実は否認する。前記決議はその実は同年六月十二日の臨時株主総会においてなされたものであるが、前記の如く同年同月三十日にその登記手続をするに際し登記の便宜上その前日に決議がなされたように議事録を作成したに過ぎないのである。と述べた。<立証省略>

三、理  由

本件株主総会の決議が果してなされたか否かを検討するのに甲第一号証、同第二号証の一乃至四の各記載に証人木村長治、同富田盛蔵、同池本信明、同島田貞雄の各証言に被告代表者清水逸夫本人訊問の結果並にこれらの証拠により成立を認め得る乙第一及び第二号証の各記載を綜合すると被告会社は経営に破綻を来し、従業員に対する給料の支払にも事を欠く様になり、昭和二十六年六月頃には遂に約七十万円に上る未払給料債務を生ずるに至つたので、同年同月十二日臨時株主総会を開催し、被告会社を解散し清算人に訴外清水逸夫を選任する旨の決議をしたのであるが、此の決議が執行されない間に二週間の法定登記期間を経過したので被告会社の取締役は同月二十九日に各株主と登記の為の措置を検討した結果株主に対し電話による持廻り決議の方法によつて、同月十二日にした前記決議と同一内容の決議を重ねて為し、翌日に至つて解散並に清算人選任の各登記を申請したことを認め得る。右認定を覆して本件決議がその実は存在しないものであることを確認し得る証拠は存しない。

しかりとすれば、かような決議の方法は違法たること極めて明白であるけれども、兎も角株主総会の決議としては一応存在するものというに妨げないから右決議の不存在確認並にこれを前提とする登記の抹消手続を求める原告の主たる請求は他の判断を為す迄もなく失当として棄却すべきである。

よつて更に原告の予備的請求の当否について検討する。被告代表者清水逸夫本人訊問の結果によれば、昭和二十六年六月二十九日にされた本件決議はこれを為すに当り、予め会議の目的たる事項を記載した招集通知を同日より二週間前に各株主に対して発したわけではなく、かような手続は全然執られていないことを認め得るけれども、此の決議は前記に認定した経緯により、同年六月十二日にされた決議を単に登記手続の便宜上更に繰返したに止るものであつていわば形式的のものであるから特に被告会社に不利益を及ぼすものではないと考えられるばかりでなく、前に引用した乙第二号証の記載によると原告は同年六月十二日に臨時株主総会に出席して前記決議を為し且同日の総会議事録にも取締役として署名捺印していることを認めることができる。そして原告は同年同月二十九日にされた本件決議についてのみ特にその違法を主張してこれが取消訴訟を提起し、これと内容を同じうする同年六月十二日の決議に対しては別に不服の申立をしていないことは弁論の趣旨に照して明白であるから以上の事実を考え合わせてみると原告が株主として本件決議の手続に前記の違法があることを理由として、その取消並に登記の抹消手続を求めることはその権利を濫用するものというほかはない。よつて原告の本訴予備的請求も亦失当たるに帰する。そこで当裁判所は原告の第一次及び第二次の各請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 木本楢雄)

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